「すき間」としてのイッセイミヤケ論

ファッションの/好みが少し/変わるとき/生き方の好み/微妙に変わる(松田 わこ)

『朝日新聞』2022年2月27日朝刊「朝日歌壇」

1,

思い返せば、ファッションの好みが瞬く間に変わってしまう人間だった。

 自分で自分の服装を選び始めたのは中学生の頃からだったが、その頃から大学卒業まで私の服装は毎年、いや毎シーズンごとに変わっていたように思う。ショッピングセンターで母を連れ回しながら5時間かけて選んだ1着が1年後には陽の目を見ないということはざらにあった。

 「MAJESTICLEGON」のような花柄とレースで構成された可憐なものから「179/WG NICOLE CLUB」のようなアクティブでボーイッシュなもの、はたまた「ZARA」のような前衛的で先鋭的なものまで、私の服装の変遷はかなり多様だ。

では、会社員になって労働時間を対価として賃金をもらう身になった現在、その給与を一番使っているものは何か、と問われれば迷わず「イッセイミヤケ」と即答できる。

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